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【チェキ×さえりさん】改めて日常をすくいあげる“エモチェキ”のすすめ

COLUMN

「チェキで写真を撮ってみませんか?」

とあるきっかけがあり、そう提案された。

いろいろと考えた結果、「じゃあ、日常のなんでもない時間を切り取ってみてもいいですか?」と答えていた。

「日常を見つめ直す」という行為が好きだ。

仕事のことや恋人のこと、家族のことに友達のこと。日々に一生懸命な私たちは、すぐそれらで頭がいっぱいになってしまう。あれはどうしようか、これはどうだったっけ、あとあれもやらなくちゃだし、そういえばあの子どうなったかな。そんなことを考えながらいつの間にか食事を終え、味さえ覚えていないような時だってざらにある。

日常は、見ようとしなければ簡単に見失ってしまう。

たとえば、眠りから覚めたばかりのつま先にあたるタオルケットの感覚や、蛇口をひねったときの水が出るまでの一瞬のためらいのこと。夕暮れにどこかの家から漂ってくるあたたかな夕食の香りや、息を潜めているような玄関に外気がぶわっと流れ込む瞬間のこと。

意識しなければ行為のひとつひとつの境界線は曖昧になり、すべて流れるように過ぎていってしまうけれど、日常は本当は“いとおしさ”の積み重ねなのだ。幾重にも重なり合ったいとおしさの層のなかで私たちは暮らしている。

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「いいですよ。じゃあ、日常を好きに切り取ってみてください」。

そう言って渡されたのは、「“チェキスクエア” instax SQUARE SQ10(以降、SQ10)」。従来のチェキとは違い、なんとデジタル機能が搭載されたチェキ。撮った写真は、フィルターをかけたり明るさを変えたりと編集が可能。もちろん「プリント」のボタンを押せば、従来通り、その場で印刷ができる。

これを3ヶ月間手に持って、“いとおしい”を切り取っていった。

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家の扉の“パタン”という、暮らしを閉じ込めるような音を聞いてマンションを出て、地面を踏みしめる瞬間が好きだ。開放的な空間を、自分のからだ一つで突っ切って行くような感覚。新鮮な空気がみるみる肺に入りこんできて、世界とわたしがとても近くなる。
朝は苦手だけれど、あの瞬間だけは「朝」を好きになれる。

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そういえば朝の、寝癖のついた髪の毛も好き。わたしは割と直毛なのでなかなか寝癖がつかないけれど、くるんと不規則に跳ねた不良な髪の束を見ると、なんだか嬉しくなる。はずんでいるように見えるせいだろうか。ちなみに、寝癖のついた恋人はもっと好き。

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火をつけた時の、青と赤のグラデーションもいい。重たい色合いのフライパンのしたで、薄青い火が「サー」とか「シャー」とか音を立てながらぐらぐらしているのを見ていると、“かっこいいな”と思ってしまう。
ついでに、カラリと焼きあがったパンにマーガリンを滑らせる時のこすれるような音も好き。やさしいあたたかさに、とろけて染み込むマーガリンの綺麗なあぶく。そして一口いただいた時の、朝の味。

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最近はドライフラワーを作るようになった。大事な思い出の花がカラカラになっているのを見ると、モノクロの無声映画を思い出す。静かで、だけれど息遣いはたしかにあって。なにかそういうものに、ドライフラワーは似ている。

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ある日、いつも使っている電車に乗ろうとして昨日まではなかった案内が足元に広がっているのに気づいた。わたしたちが眠っている夜のうちに風貌を変える街の一画。世の中にあるすべてのものには、必ず人がかかわっているのだ。誰かが企画をしたり、誰かがデザインしたり、誰かが設置していたり。
そしてそこに関わった彼らにも彼らなりの物語があるはずで、それを想うと目にはいるものすべてに「人の気配」が感じられて、そのあまりの多さにめまいがしそうになるときもある。

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どこを歩いていても、人がいる東京。聞こうとしなくても聞こえて来る会話。見ようとしなくても見える人の顔。一生のうちで、今この瞬間しかすれ違わなかった人もいるし、もしかしたらどこかで何度もすれ違っていて、目の前の人と出会うのは実はもう10回目という人もいるかもしれない。彼らの生きてきた過去に想いを馳せる時間も好き。

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今はほとんど使われなくなった緑色の公衆電話たちが、まるで亡霊かなにかのように佇んでいる様子も切なくて好き。彼の存在に気づくことができるとき、自分の“余裕”を確認できる。たしかにそこにあるのに、気づく時と気づかない時がある。それは子供にしか見えない精霊かなにかのようだなと思う。

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雨上がりの散歩道はキラキラした街灯が地面に映って、気持ち良い。雨が降ったあとの植物たちの、ぐったりとしている様子もいい。運動をたっぷりしたあとの人間のように、どこか嬉しそうで清々しい。

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夕日が沈むのをじっと見る機会もあった。夕日が沈むスピードの、なんと早いことか。「沈みそうだね」と言ってカメラでパシャパシャと撮っていたら、ほんの5枚のうちに一番綺麗な瞬間は通り過ぎてしまった。ぼやぼやしている人を夕日は待ってくれない。

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酔っ払い達が集まる夜中。年齢性別もバラバラな人たちが、お酒を煽りながらくだらない話をする時間。昔よりも何も考えずにすごせるようになった。こんな風に頭を空っぽにしてげらげらと笑っている時、大人っていいなと思う。退屈してる大人ばっかりじゃないんだぜって子供の頃のわたしは言いたい。

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たばこは嫌いなのだけど、たばこの煙を見ているのは好きだ。白く、細く、宙に立ち上っていく様子はどうみても優雅だし、それを自分の口から吐き出した濁った煙で打ち消してしまうあの非情な様子も、かっこいい。

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やたらと話しかけてくる運転手は苦手。「このあたりでね、よく芸能人を乗せるんだよ」。こっちは疲れ果てていて、おじさんの話なんて聞く余裕はこれっぽちもないというのに、結局わたしは聞いてしまう。「今までに誰を乗せたんですか?」。本当は興味なんてないくせに質問までして居心地悪く過ごし、お金を払って降りる。はっきりものの言えない大人だな、とじぶんのことを再確認するも、まあそれも悪くないか、なんて思う。いずれにせよ、自分の意思で好きなことをして好きな時間に帰れる。この生活も好きだ。

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今年は雨がやたらと多かった。雨粒が窓に模様を作る瞬間を幾度も見ることができた。

そういえばわたしは「雨が好き」と前から公言している。すると必ず2ヶ月に1回くらいは「なぜ雨が好きなんですか」と聞かれる。

雨の日は、まず、音が良い。雨粒の大きさと落ちる速度によって聞こえる音が変わるのも趣深いし、雨の日のひそやかな空気も好きだ。けれどなによりも、「今日は雨でうれしいな」なんて思えてしまう、その“心持ち”を愛している。できるだけ多く、そういう余裕のある自分でいたいと願って、「雨が好き」と言っている。


この他にも、日常のあらゆる「いとおしい」を拾い上げてみた。

誰にでもあるような瞬間たち。技術など必要のないチェキで切り取って振り返ると、いつも見ている景色が、やっと注目される時が来たかと浮き足立っているような鮮やかさがそこには写っていた。

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わたしが過ごしてきた日常はこんなにもいとおしかったんだな、と思う。つい昨日の出来事なのに、写真に残していなければ一瞬で忘れてしまいそうな些細な瞬間たち。それをかきあつめていっぺんに見ると“エモい”と思った。

普通にしていると忘れてしまうものだからこそ、時にすくい上げてみる。見つめる。感じる。それは長い時間を生きて行くうえで、贅沢な遊びのようなきがする。

忙しくて日常を見落としがちな人たちこそ、秋はチェキを片手に散歩してみてはどうだろうか。

 
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INFORMATION

いつものこと〜変わらない日々を愛せるか〜
夏生さえりチェキ写真展

さえりさんが本記事で撮影をしたチェキや、今まで撮りためたチェキをさえりさんの言葉と共に展示をいたします。
合わせてオリジナルグッズも販売予定です。
実際に写真を見ることができる貴重な機会にぜひ、遊びにいらしてください。

2017.10.03日(火)〜10.15(日)

FUJIFILM WONDER PHOTO SHOP

住所:東京都渋谷区神宮前6-29-4 2F
電話番号:03-6427-9709
営業時間:1F 11:00〜20:00/2F 11:00~19:00
※第2・第4木曜日は1F・2F共 18:00まで

詳細はこちら

INFORMATION

トーク&交流会イベント「さえりさん×イラストレーター五島夕夏さん」

今回、チェキで日常を見つめ直したライターのさえりさんと、交流のあるイラストレーター五島夕夏さんが「日常」をテーマにトークイベントを開催します。
また当日はさえりさんの言葉と写真がつまったZINEや五島さんが描いたイラストのポストカードや缶バッチなども販売予定。
さえりさんと五島さんが考える日常の見つめ直し方を聞きにいらしてください。

2017.10.05(木)
FUJIFILM WONDER PHOTO SHOP

東京都渋谷区神宮前6-29-4 2F
OPEN 19:00/START 19:30
定員:最大35名
参加費:1,000円
参加方法:メールでの予約制(抽選)
下記、E-mailアドレスにて内容を記載の上お送りください。

【E-mail】wonderphotoshop@gmail.com

【タイトル】『10月5日トークショー予約』 

【本文】以下情報のご入力をお願いいたします。

①お名前
②年齢
③電話番号
④お友達を連れて来る場合、お友達の人数とお名前
⑤一言
※抽選結果は9月29日(金)にメールにて応募者全員にご返信いたします。

詳細はこちら

 

今回使用したチェキ

“チェキスクエア” instax SQUARE SQ10

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詳細はこちら

text by Saeri Natsuo
photo by ︎ Nozomu Toyoshima

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