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臼田あさ美写真集『みつあみ』特別企画 連続チェキインタビュー 第1回:藤田一浩

信頼関係がうかがえるのが僕の「いい写真」

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――藤田さんにとって、「フィルムで撮る」とはどういうことなんでしょう?

僕にとって、フィルムで写真を撮るという行為は音楽のライブやサッカーの試合を見に行くのと近いんです。ライブで例えるとわかりやすいかもしれないけど、モニターで見てるよりも、小さくても見えづらくてもいいから、ステージにいて動いてるその人を見て、みんなの歓声を聴いていたいんですよ。それが、同じ瞬間を生きている証拠になるというか。

――遠くからステージを見てると、そこにいる人の表情までは見えなかったりすることもありますよね。

それはそうなんです。だけど、その動きを見ながら「あの人は今、何を考えてるんだろう?」と想像を膨らませたりすることはできるし、この瞬間に歓声が大きくなったとか、モニターではボーカルの顔しか映らないけど実は隣でギターがすごいことしてた――みたいなことまで後々思い出せるような場にいることが、僕にとって強烈な体験になり得るんです。それが、さっき言ったように「網膜に残る」ものになる。だから、僕は小さくても本物を見ていたいんですよ。撮影のときも、モニターに映る像ではなく、僕はそこにいるモデルと常に対峙しているわけだから、「どう撮れてるかは確認できないけど、彼女は今こんなことを考えているな」とか、実際にコミュニケーションを取り合ってお互いの意図を確認していく過程とか、そちらを重要視しています。

――デジタルとフィルムの「プロセス」の違いということですね。

そう。今はデジタルで撮った写真にフィルターをかけてフィルムっぽい質感にすることもできるし、色調もいろいろ変えられる。そのよさはあると思います。逆に、「どうしてもフィルムの質感じゃなきゃ」という人がいるのもわかる。だけど、単純に質感だけじゃなくて、写真を撮っている現場、その瞬間の楽しさにおいてこそ、フィルムの何物にも代えがたい魅力があると思うんですよ。僕の被写体はほとんどの場合人だけど、ただ「人」が映っていればいいというわけじゃない。「今すぐ画像で確認できない」という、言ってみればリスクをも乗り越えて僕に自分を預けてくれるという信頼関係を築けるかどうかが大事なんです。例えば臼田さんなんかはもう何度も撮っているから僕を信頼してくれているのはわかるけど、初めての相手だって、撮影していくうちにそういう瞬間、そういう表情が訪れるときがある。そういうときの写真が、僕にとっての「あ、撮れた!」という写真。信頼関係がうかがえるものが、僕にとっての「いい写真」なんです。

――そういう瞬間を相手も心地いいと思っているからこそ、時間やコストがデジタルよりもかかるのを承知で、フィルム一本でやっている藤田さんにお願いしたいという人がいる。

そうですね。「フィルムで撮ってください」とわざわざ言われたことは、たぶん、一度もないと思います。初めての方もおなじみの方も「藤田なら当然フィルムだろう」と思ってオファーしてくれているわけだし、僕の撮る写真を信頼してお話を頂いてるんだな、ということがすごくわかるので、幸せですね。僕も、そのぶんいい写真でお返ししたいし。もちろん僕はプロだからそこにクオリティ――ファッションなら表情だけでなく服もちゃんと写っているとか、光の具合とか――も厳しく求めるけど、誰もがそういうふうに写真を撮らないといけないわけじゃない。ただ、誰がどんな相手を撮っても、いい写真には必ずお互いの間で共有されてきたいい空気とか、いい関係性があるなと思うんです。そして、やっぱりそれはフィルムという、「時間(手間)をかける」ものの中に現れやすいんじゃないかなと。

――逆に言うと、そういう心地よい関係を築く媒介になるものが、カメラとか写真であるということですもんね。

うん、そう思います。この写真集や企画をきっかけに、写真のそういう側面に興味を持つ人が増えて、どんどんすそ野が広がるといいですね。

『みつあみ』インタビュー第2回:川島小鳥 はこちら
『みつあみ』インタビュー第3回:奥山由之 はこちら
『みつあみ』インタビュー第4回:臼田あさ美 はこちら

INFORMATION

臼田あさ美写真集 みつあみ

臼田あさ美写真集『みつあみ』特別企画 連続チェキインタビュー 第1回:藤田一浩 life0714_mitsuami_4-540x766

双葉社
¥2,160

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今回使用したチェキ

“チェキワイド” instax WIDE 300

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interview by Takafumi Ando
photo by Kazuhiro Fujita

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