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臼田あさ美写真集『みつあみ』特別企画 連続チェキインタビュー 第4回:臼田あさ美

「撮ること」と「撮られること」

――臼田さんは、チェキが登場して最初にブームになった時期をリアルタイムで経験していますよね。

そうですね。友達との記念撮影用の道具みたいにチェキを使っていました。それは本当に日々の記録という感じでしたが、今こうやってみるとアートとしての表現もできるし、奥が深いんだなと思います。顔にピントが合っていなかったりしても、それはそれでちゃんとそのときの思い出をとらえているし。

――ご自分でもフィルムで写真を撮っていますが、どういうきっかけでそうなっていったんですか?

中学生や高校生の頃はまだデジタルカメラも持っていなかったし、「写ルンです」とかで日々出会う人や見るものを何の気なしに撮っていました。今でこそアートとしての写真を見るのも好きですけど、当時はそんな意識はまったくなかったんです。その意識の部分は、今でも一緒かな。アートとかおしゃれとかいう感覚ではなく、そこにあるものを撮る、というのが延長しただけで。

――自分が「撮られる側」に回ってからも、何も意識は変わらない?

撮ることに対する意識は変わらないですけど、「撮られる」ということへの意識は変わりましたね。技術的には一度デジタルの波がドドドッと来て、そのうちまたフィルムが流行り始めたりとかいう変遷はありますけど、それとは関係なく、自分の中ではどんどん「なるべく何もしない」「作らない」ということを考えるようになっていったかもしれません。たぶん自分が撮りたい写真がそうだからというのもあるんだと思うんですけど、なるべく「撮られている」という意識から遠くいたいんですよね。どうしたってカメラは目の前にあるわけだし、現場が真っ白なスタジオだったりすると明らかに非日常の空間なんですけど、そんななかでもなるべく構えずにいたいなと。

――「こういう自分を見せてやろう」みたいなものではなく。

はい。もしかすると、それは自分が「モデル」じゃなくて「女優」になったからなのかもしれませんね。そこで表現をするというよりは、自分の存在そのものを撮ってもらうという意識にシフトしたことも、すごく大きいんだと思います。

――先ほど、自分が撮りたい写真も「相手が撮られることを意識していないもの」だと言っていましたが、そういう気持ちで人を撮るのはなぜですか?

忘れちゃうからかな。撮らなかったら、ただ過ぎ去ってしまうから。とは言え、「この瞬間を永遠に刻み込むんだ!」みたいな、熱くたぎる思いがあるわけじゃないんですよ(笑)。ただ、なにかいいことや楽しいことがあったときに「今日の日を忘れないでいよう」と思う代わりにシャッターを押すという感覚なのかも。

――「記録」というものとも少し違うんですね。

そうですね。それだったらiPhoneでいいし。記録と記憶の間くらいの「曖昧さ」がいいんだと思います。

“ムッツリ”がおもしろいんです

――いま若い人たちの間でフィルムカメラが流行っていたりするのは、どうしてだと思いますか?

たぶん、新しいからなんじゃないですかね。物心ついたときからデジタルの時代で、きっと私たちみたいに「懐かしい」という意識ではなく、単純に新しい表現手段として選ばれているんだと思います。インターネットのおかげで発信も楽になっているし、撮り方だったり過去の写真の名作だったりも検索すれば簡単に出てくるし、昔みたいに「フィルム」というものに重苦しく向かい合わなくても気軽に撮れるようになりましたよね。もちろん、アクセスが簡単になったのはとってもいいことなんですけど、一方で私はすごく自分で勉強して、技術を磨いて……という時代の人たちも知っているから、どこかで「情報の中を泳ぐだけじゃ物足りないな」と思うこともあるんです。ただ、その軽やかさも今の時代を表しているものだから、悪いことじゃないとは思いますけど。

――Instagramなどで自分の撮った写真をアップする人も増えましたね。この『みつあみ』に収められているもののほとんどはそういうふうに「誰かが見る」ということをまったく意識しないで撮られた写真なので、実は対極的な存在だったりしますが。

そうですね。いまは不特定多数の人に向けて自分を発信するとか、自己プロデュースすることが当たり前のように行なわれていますし、自分でもInstagramをやってはいますけど、個人的にはどちらかというと“ムッツリ”のほうが好きかな。「これを好きな自分を誰かにアピール」というよりは、「誰も評価しなくていいけど私は大好きだし、別に人が知ろうと知るまいとどっちでもいい」という対象がある人のほうがおもしろく感じるし、自分もこれまでそういう音楽や映画があったことが幸せだったと思っているので。

――そう考えると『みつあみ』は「ムッツリな写真集」ですね(笑)。

ほぼプライベートな瞬間しか写ってないですからね(笑)。ちっともおしゃれじゃない。なんかガサツだし、すっぴんだし(笑)。

――ちょっとチェキの話に戻ると、これも割と“ムッツリ”というか、比較的クローズドな関係の中でやり取りされることが多いですよね。撮って、あげるにせよ自分で持っているにせよ、その他の人に渡るということはあまりない。

そういう意味では、ちょっと手紙に似てますよね。……これ、このままハガキになればいいんじゃないですか!?この写真現物のまま切手を貼って、簡単なメッセージだけ書いて。これで旅先とかから写真が送られてきたら、ちょっと感動しますよね。封筒に写真が入って……というのとはまた違う情緒があって。

――それは、恋人や友達から届いたらすごくうれしいですね。

でしょ!?富士フイルムさんでのサービス化を提案します(笑)。

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今回使用したチェキ

“チェキワイド” instax WIDE 300

臼田あさ美写真集『みつあみ』特別企画 連続チェキインタビュー 第4回:臼田あさ美 0330_shohin_wide

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